1. 卵子凍結とは?

卵子凍結とは、女性の卵子を採取し、液体窒素を用いて超低温環境下で凍結保存する技術です。この技術の主な目的は、将来の妊娠・出産に備えることにあります。

具体的には、以下のような目的で卵子凍結が選択されます。

  • 社会的卵子凍結: キャリア形成、学業、パートナーとの出会いなど、様々なライフプラン上の理由から、すぐに妊娠・出産を希望しない方が、若く健康な状態の卵子を保存し、将来の選択肢を広げるために行われます。加齢による卵子の質の低下や数の減少を防ぐ目的があります。

  • 医学的卵子凍結: がん治療(化学療法や放射線治療など)によって卵巣機能が低下するリスクがある方や、早期閉経のリスクがある方など、病気の治療や体質的な理由で将来の妊娠が難しくなる可能性がある方が、治療前に卵子を保存する目的で行われます。

卵子凍結は、女性が自身の生殖能力を管理し、将来のライフプランをより柔軟に設計するための重要な医療技術として、世界中で注目されています。

2. 胚凍結との違い

卵子凍結に類似するものとして、胚凍結があります。

卵子凍結は、卵子単独で保存するため、将来出会うパートナーの精子で受精させることができます。女性自身の意思で将来の選択肢を広く持てるのが特長です。

一方、胚凍結は、パートナーの精子と受精させた「受精卵」を凍結します。すでに受精という大きな関門をクリアしているため、融解後の妊娠率は高くなる傾向にありますが、凍結時点でパートナーが確定している必要があります。

3. 卵子凍結の保存方法

卵子凍結には、主に2つの保存方法があります。

①緩慢凍結法

時間をかけてゆっくりと温度を下げていく方法です。凍結保護剤を細胞内外に浸透させ、細胞内の水分が凍結によって膨張し、細胞を傷つける「氷晶」が大きくなるのを防ぎます。専用のフリーザーを用いて段階的に冷却を行い、最終的に液体窒素中で保存します。比較的手順が確立されていますが、氷晶形成のリスクが完全に排除されるわけではありません。主に「クライオバイアル」が使用されます

②ガラス化凍結法

現在、卵子の凍結保存において主流となっている方法です。細胞を極めて高濃度の凍結保護剤に浸し、一気に液体窒素(-196℃)に投入することで、細胞内の水分を氷晶にすることなく、まるでガラスのように固化(ガラス化)させます。この方法の最大の利点は、細胞へのダメージが少なく、凍結・融解後の生存率や妊娠率が高いことです。卵子のような水分量が多くデリケートな細胞の保存に適しています。主に「ストロー」や「クライオトップ」などの少量の液量で急速冷却が可能な専用容器が使用されます。

どちらの方法も、最終的にはケーンという金属の器具に取り付けられ、液体窒素タンク(クライオタンク)と呼ばれる専用の保存容器に保管されます。これらのタンクは、液体窒素の気化を防ぎ、卵子を安定した極低温状態で長期保存できるよう設計されています。

4. 卵子凍結容器選定のポイント

卵子凍結用容器の設計・製作に携わる皆様にとって、適切な容器の選定は、卵子の生存率と安全性を確保するために極めて重要です。以下のポイントを考慮して選定を進めてください。

  • 極低温耐性: 液体窒素の-196℃という極低温に耐え、脆化せず、破損しにくい素材(例:医療グレードのポリプロピレン、ポリスチレンなど)を選定することが不可欠です。

  • 化学的安定性: 凍結保護剤や培養液との反応性がなく、溶出物が卵子に悪影響を与えない素材である必要があります。

  • 生体適合性: 医療用途であるため、医療機器の品質マネジメントシステムに関する国際規格であるISO 13485の認証を取得している、またはそれに準拠した製造体制が求められます。

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