医療や研究分野では、高度な清浄性が求められる製品が不可欠です。その中でも、「エンドトキシンフリー」と「ヌクレアーゼフリー」は異なる目的で必要とされる基準です。ヌクレアーゼフリーはDNAやRNAを分解する酵素を排除し、正確な遺伝子検査や実験を実現するための基準。一方、エンドトキシンフリーは、人体に有害な内毒素を完全に除去し、安全な医療機器や薬剤を提供するための基準です。そして、それぞれの特性と役割を理解し、適切な環境を維持することが、正確性と安全性を両立させる鍵となります。
ここでは、医療用プラスチック成形品に必要とされる、エンドトキシンフリーとヌクレアーゼフリー、その2つの違いについて、わかりやすく解説いたします。
ヌクレアーゼフリーとは?
DNase とは、DNA(デオキシリボ核酸)を分解する酵素であるデオキシリボヌクレアーゼを意味しており、RNase とはRNA(リボ核酸)を分解する酵素であるリボヌクレアーゼを意味しています。つまり、DNase フリー・RNase フリーとは、それぞれDNA・RNA の分解酵素がフリー(付着、混入していない)であることの総称です。
DNase やRNase はあらゆる場所に存在しているため、DNA・RNA を扱う実験などで使用されるチップ、チューブ、水や試薬、実験室内部の器具、装置などは、対象となる核酸が分解されないようにするために、すべてDNase/RNase フリーの状態でなければなりません。当然、DNase/RNase フリーの製品を作る施設内も、DNase/RNase フリーである必要があります。
このDNase/RNase どちらも付着・混入していない、ヌクレアーゼ(核酸分解酵素)が付着・混入していない状態のことを、総称してヌクレアーゼフリーと言います。ヌクレアーゼフリーは、分子生物学、遺伝子工学、診断検査のための試薬、器具、溶液などが対象となります。ヌクレアーゼはDNA やRNA を分解するため、分子生物学や遺伝子工学の実験、診断検査において核酸の分解を防ぐことが重要です。ヌクレアーゼが混入すると、実験結果や診断結果が不正確になる恐れがあるため、ヌクレアーゼフリーが求められます。
エンドトキシンフリーとは?
エンドトキシンとは、グラム陰性菌(大腸菌や赤痢菌、サルモネラ菌、レジオネラ菌、その他にも多数の種類があります。)の細胞壁を構成しているリポ多糖(リポポリサッカライド 通称LPSと呼びます。)のことで、日本語では内毒素と呼ばれています。グラム陰性菌が生きている間には増殖時(細胞分裂時)に少量が、菌が死んだり破壊されると、細胞壁から大量に分離し、人体に様々な問題を引き起こします。
エンドトキシンを除去、または失活させるのは大変困難で、250度以上の高温で30分以上の加熱が必要となります。エンドトキシンはグラム陰性菌がいる場所には常に存在しており、例えば我々が普段口にする食べ物や飲み物の中にも大量のエンドトキシンが含まれていると言われています。しかし、食べ物に含まれるエンドトキシンは、人体の健康状態や摂取した量にもよりますが、腸のバリヤ機能により、体内へはほとんど吸収されず、また、吸収された場合でも少量であれば肝臓で分解され、無毒化されると言われています。一方、傷口などから、体内に直接エンドトキシンが大量に入り込むと、敗血症などを引き起こしてしまい、最悪は死に至ります。そのため、体内に直接装着する医療機器や、注入する医薬品、薬剤や研究試薬を使用する製品は、エンドトキシンフリーであることが必要になります。
エンドトキシンフリーとヌクレアーゼフリーの違いとは?
上記にてエンドトキシンフリーとヌクレアーゼフリーをそれぞれ説明いたしましたが、簡単に比較すると下記のようになります。
- ヌクレアーゼフリーは、主に核酸分解酵素(DNase、RNase)の混入を防ぐことに重点を置き、遺伝子関連の正確な分析や検査に必要。
- エンドトキシンフリーは、人体に有害な内毒素を除去し、安全性を確保するために求められる。
エンドトキシンフリーとヌクレアーゼフリーは、どちらも高度な清浄性・フリーな状態が必要とされますが、目的や対象が異なる点が特徴です。
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