医療機器・プラスチック部品を国産化(国内回帰)するメリット

1.医療機器製造の現状と課題
日本の医療機器製造業は、高齢化や在宅医療拡大を背景に市場成長が続いている。診断機器や医療用プラスチック、精密加工の分野では海外企業よりも、日本企業の技術力を活かせるだろう。ただ、医療機器製造には、ISO13485や医療機器製造販売業許可をはじめとしたライセンス、クリーンルームでの製造環境が必要不可欠であり、品質保証付加が高く、組み立て工程などの自動機による自動化が進められているものの、人材不足も深刻化している。また、医療の業界では、寸法精度やバリなどの不良NG項目が多く、高い技術力が求められる。しかし、ノウハウを持つベテラン技術者の高齢化に伴い、後継者不足も大きな課題だ。それ故に、コストを優先し、海外委託する企業が多いのが現状です。
2.海外委託の主なリスク
海外委託は、人件費を下げたい、大量生産してコストをできる限り抑えたいなどメリットがある一方で、リスクも多く潜んでいます。
1つ目は、品質管理のトラブルです。
医療製品の場合、消耗品であってもバリやクラック、寸法ズレなどの不良は重大問題になります。これらは、日本と外国の作業文化や品質への向き合い方の違い、作業教育の差などが原因であることが多く、設計意図や品質基準が正しく理解されていないリスクがあります。
例えば、日本では微細な擦り傷もNG品としていても、海外では機能に問題ないのでOK品という判断になってしまうこともあります。また、製造プロセスや作業環境がブラックボックス化してしまい、仕様通りの環境下で製造されているのか不透明さもリスクへと繋がります。
2つ目は、安定供給のリスクです。
コロナ渦や円安、関税問題、為替など、世界情勢に合わせてロックダウン、工場停止、コンテナ不足、航空便停止などいつ供給が途絶えてしまうか分からないのもリスクです。滅菌品やクリーン包装、箱潰れなどの衝撃管理など輸送する上での注意点も多く、届いたものの品質が安定しないことも多くあります。
3つ目は、薬機法をはじめとした法規制への不適合リスクです。
医療機器の製造委託をする上で、QMS(品質マネジメントシステム)の管理が必要となります。また、製品のプロセスバリデーションなど、製品の量産を始める上で必要となる試験サンプルもリアルタイムで行うことができず、量産販売まで時間がかかってしまいます。また、委託先の製造環境やQMSが薬機法に適合しているのか、行政への変更手続きや監査など査察対応に膨大な時間と費用がかかるのも欠点です。特に、文書レベルや記録の管理、教育履歴、トレーサビリティの管理が日本と差が大きくでやすいポイントです。
3.国産化(国内回帰)のメリット
国産化の最大のメリットは、品質を安定させやすいことです。医療機器は、異物、バリ、微細キズ、寸法のバラつきなどが許されにくい業界です。国内生産ですと、現場の確認がしやすいことや、万が一の不具合があった場合の改善スピード、品質基準の共有がしやすい。また、成形という点では同じ製品を作ろうとしても、海外と日本では金型・ランナーの設計が異なり、品質精度や不良率に大きく影響する部分になります。
その他にも、国内であることから安定供給がしやすく、供給がストップするリスクの軽減にも繋がります。また、医療は変更管理が多く、金型の修正、材料の変更、成形条件の調整変更など微細なものはスムーズに行えるため、試作→評価→バリデーションのPDCAを早く回せるのも大きなメリットです。
トレーサビリティの文書管理、記録精度や監査対応のフォーマット統一も国内工場のほうがしやすく、管理がスムーズになるのもメリットのひとつです。
4.国産化を成功させるパートナー企業の選び方
医療機器の国産化を成功させるには、単純なコスト比較ではなく、品質・供給・開発力を総合的に備えたパートナー企業を選定することが重要です。
医療機器は人命に関わる製品であり、一般工業製品以上に厳格な品質管理が求められるため、ISO13485への対応や、トレーサビリティ、変更管理、監査対応などの品質保証体制が整備されている企業であることが前提条件となります。
特に医療用プラスチック成形では、異物混入やバリ、微細なキズ、寸法ばらつきなどが重大な不具合につながるため、クリーンルーム環境やパーティクル管理、微細成形技術なども重要な評価項目となるため、設備環境や医療機器製造業許可や医療機器製造販売業許可などライセンスの有無の確認が必要です。
医療機器は開発から量産まで長期間に及ぶため、単なる受託加工ではなく、試作段階から材料選定、金型構造、成形条件、シール性や滅菌対応まで提案できる技術力を持つ企業が望ましい。
コロナ渦以降、価格競争だけではなく、「高品質」「安定供給」「迅速な対応力」が重視されており、問題発生時に原因分析から改善提案まで迅速に対応できる企業との連携が、医療機器国産化成功の大きな鍵となっている。