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なぜクリーンルーム射出成形は難しいのか?

親和工業株式会社 医療用プラスチック成形.com


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はじめに

医療機器や体外診断用製品のプラスチック部品を扱う開発・調達の担当者であれば、「クリーンルーム成形に対応できる委託先が見つからない」という経験をお持ちの方も少なくないはずです。

清浄な環境で射出成形を行うことは、一見すると単純な話に思えます。しかし実際には、成形機自体が汚染源になるという根本的な矛盾を抱えており、発塵・空調・静電気・金型・作業員という複数の課題を同時に制御しなければ、品質を維持することができません。

本コラムでは、クリーンルーム成形がなぜ難しいのかを構造的に解説し、その難しさを乗り越えるために必要な体制を具体的に示します。

射出成形とは何か、そしてクリーンルーム成形は何が違うのか

【定義】
クリーンルーム成形とは、HEPAフィルターで塵・埃を除去した清浄空間の中で射出成形を行う製造方式のことを指します。

射出成形の基本的な仕組み

射出成形とは、加熱して溶融させた熱可塑性樹脂を金型のキャビティに高圧で射出し、冷却・固化させることでプラスチック製品を量産する加工方法です。

溶かした樹脂を金型に射出し、冷却・固化させる一連のプロセス

一サイクルは「計量→射出→保圧→冷却→取出」で完結します。金型の形状に樹脂を充填し、圧力をかけながら冷やして固める。この繰り返しによって、同じ形状の製品を高い再現性で量産できます。

射出成形が医療・バイオ分野で広く採用される理由は、この量産性と形状自由度の高さにあります。φ0.6mmの極細形状や0.1mmの薄肉形状のような複雑な部品でも、金型さえ正確に設計できれば安定した量産が可能です。

量産性と形状自由度の高さが、医療・バイオ分野でも採用される理由

体外診断用チップ・採血管・内視鏡用部品・生殖医療用容器など、医療現場で使われるディスポーザブル(使い捨て)製品の多くが射出成形で作られています。一度金型を製作すれば、同品質の部品を安定的に量産できる点が、品質の均一性を求める医療分野に適しています。

クリーンルーム成形とは何か——「塵を近づけてはいけない」という制約が、すべてを変える

一般の射出成形と、クリーンルーム成形の本質的な違いは何か。一言で言えば、「成形品に塵を近づけてはいけない」という制約の有無です。この制約が加わった瞬間に、成形工程の設計思想はまるごと変わります。

クラス10,000とは何か——HEPAフィルターで0.5μmの塵を1立方フィートあたり1万個以下に抑える空間

クラス10,000とは、1立方フィート(約28.3リットル)の空気中に、0.5μm以上の微粒子が10,000個以下しか存在しない清浄度水準を指します。一般的な工場の室内空気には、同じ空間に数百万個単位の微粒子が漂っています。クラス10,000はそれを1万個以下に抑えた環境であり、医療用プラスチック製品の成形に求められる水準です。

この清浄度を実現するために、弊社では室外からのエアーをプレフィルター・中性能フィルター・HEPAフィルターという3重のフィルターを通して室内に供給しています。HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)は、0.3μm以上の粒子を99.97%以上捕集できるフィルターです。

プレフィルター・中性能フィルター・HEPAフィルターの3重構造と陽圧管理が必要な理由

3重フィルターを通した清浄エアーを室内に送り込み続けることで、室内気圧を外部より高い「陽圧」の状態に保ちます。陽圧管理によって、ドアの開閉時などに外部の汚染空気が流入することを防いでいます。フィルターと陽圧、この両方が揃って初めてクラス10,000の清浄度が維持できます。どちらか一方でも欠けると、清浄度は崩れます。

医療・バイオ・体外診断分野でクリーンルーム成形が必須になる理由

医療機器や体外診断用製品の製造では、微量な異物混入が患者への直接的なリスクにつながります。遺伝子検査用のチップやピペットチップであれば、DNAや酵素のコンタミネーションが検査結果を狂わせます。不妊治療用の容器であれば、細胞毒性のある異物が生殖補助医療の成否に影響します。こうした用途では、清浄環境での成形は選択肢ではなく、必須条件です。

💡よくある質問

Q.  クラス10,000は、一般の工場と比べてどれくらい清浄なのですか?

A.  一般工場の空気中には塵が数百万個単位で浮遊しています。クラス10,000はそれを1万個以下に抑えた環境で、医療・バイオ用途の成形に必要とされる水準です。

成形機そのものが汚染源になる——なぜ一般的な射出成形の常識は、クリーンルームで通用しないのか

【ポイント】
クリーンルーム成形の難しさは、「清浄な環境を作ること」ではなく「生産しながら清浄度を維持すること」にあります。成形機・空調・静電気・金型・作業員という5つの要素が複合的に絡み合い、そのすべてを同時に制御しなければなりません。

生産行為そのものが、汚染行為と表裏一体になっている

そもそもなぜ、クリーンルームがあれば解決しないのか。答えは単純です。成形機を動かす行為そのものが、塵を発生させるからです。

可動部・樹脂バリ・スプルーカットが絶え間なく塵を生み出す

射出成形機は、型締め・射出・保圧・型開きというサイクルを繰り返す機械です。金型の開閉のたびに金属同士が摺動し、微細な金属粉が発生します。成形品に付着した樹脂バリや、スプルー(湯口)のカット時に発生する樹脂片も、れっきとした発塵源です。一般の成形工場ではほとんど問題にならないこうした発塵が、クリーンルームでは直接的な品質リスクになります。

取出ロボットの動作が気流を乱し、清浄度を下げる

成形品を金型から取り出す際、人手による作業はさらに多くの発塵をともないます。作業員の体の動き・衣服・呼気が、清浄エアーの流れを乱します。だからこそ弊社では、全成形機にセーラー万年筆社製の5軸フルサーボトラバース型取出機を設置し、取出工程における人手介入を最小化しています。ただし、取出機そのものも可動部を持つ機械であるため、その設置位置と動作が気流に与える影響を考慮した設計が必要です。

陽圧維持のための空調が、成形条件を狂わせる

クリーンルームの清浄度を維持するための換気・空調が、成形条件に悪影響を与えるという逆説があります。

換気による気流変動が金型温度・樹脂粘度に与える影響

クリーンルームは清浄エアーを大量に送り込むことで陽圧を保ちます。この換気による気流が、金型の表面温度を変動させます。金型温度のわずかなズレは、樹脂の冷却速度・収縮率・寸法精度に直結します。一般の成形工場では問題にならない環境変動が、クリーンルームでは成形条件の不安定要因になります。

季節・時間帯によって清浄度と成形条件が同時に変動する

外気温と湿度は季節・時間帯によって変化します。クリーンルームの空調システムはこれを一定に保とうとしますが、完全には追いきれません。結果として、清浄度と成形条件が同時に変動するという状況が生まれます。成形条件を安定させるためのノウハウは、こうした環境変動の実データを蓄積することで初めて培われます。

「清浄度を高める構造」が「静電気を溜めやすい構造」でもある

クリーンルームには構造的な逆説があります。清浄度を高めるために低湿度環境を維持しようとすると、今度は静電気が発生しやすくなるのです。

プラスチックは離型した瞬間に帯電し、浮遊塵を引き寄せる

プラスチック成形品は、金型から離型した瞬間に静電気を帯びやすい性質を持っています。帯電した成形品は、クリーンルーム内を浮遊する微細な塵粒子を静電気力で引き寄せます。せっかくクラス10,000の空間で成形した製品が、自ら汚染を招く状態になるわけです。

低湿度環境が帯電をさらに悪化させる

湿度が低いほど空気の絶縁性が高まり、電荷が逃げにくくなります。クリーンルームは塵の吸着を防ぐために湿度管理を行いますが、低湿度側に振れると帯電リスクが高まります。「清浄度を高めるための構造が、静電気を溜めやすい構造でもある」という矛盾は、クリーンルーム成形特有の課題です。イオナイザーによる除電は有効な対策ですが、設置位置・機種選定・クリーンルームの気流設計との整合が取れていないと、イオナイザー自体が発塵源になるリスクもあります。

金型と作業員という「動く汚染源」を管理しなければ、清浄度は維持できない

発塵・空調・静電気という3つの壁を乗り越えたとしても、金型と作業員という「動く汚染源」を管理できなければ品質は安定しません。

ガスヤニ・デポジットの蓄積と、金型搬出入が生むリスク

射出成形金型は、成形を繰り返すにつれてキャビティ表面にガスヤニやデポジット(樹脂の燃焼・分解物)が蓄積します。これを放置すると、成形品の表面品質と寸法精度が低下し、異物混入の原因にもなります。医療用成形品ではこの蓄積が特に許容されないため、定期的な分解清掃が必要です。問題は、金型をクリーンルームの外に搬出する瞬間です。搬出・搬入の動作そのものが外部の塵をルーム内に持ち込むリスクになります。メンテナンスのサイクル設計と搬出入の手順管理が、清浄度維持の重要な要素です。

人の動線・作業速度・体の向きがパーティクル数に直接影響する

作業員は、クリーンルームにおける最大の発塵源のひとつです。皮膚・毛髪・衣服から常に微粒子が発生しています。クリーンウェアの着用とエアシャワーでの除塵はその対策ですが、それだけでは不十分です。作業員の動き方・動線・作業速度・体の向きが、ルーム内の気流パターンを変え、パーティクル数を変動させます。清浄度は「ルールで維持するのではなく、仕組みで維持する」設計が必要です。

💡よくある質問

Q.  クリーンルームを設置すれば、すぐに医療用プラスチック部品の成形を始められますか?

A.  設備だけでは不十分です。成形機・金型・作業員のすべてが発塵源になり得るため、運用体制の構築が不可欠です。
Q.  静電気対策はイオナイザーを設置すれば十分ですか?

A.  イオナイザーは有効な手段ですが、設置位置・機種選定・気流設計との整合が取れていないと効果は限定的です。

なぜ親和工業では、他社が断ったクリーンルーム成形案件を量産できるのか

【ポイント】
弊社の体制は、設備・品質保証・技術という3つの層で構成されています。この3層が揃って初めて、発塵・空調・静電気・金型・作業員という5つの課題に同時に応えることができます。

発塵を構造から断つ生産環境

清浄度の維持は、個別の対策の積み上げではなく、設備全体の設計によって実現します。

プレフィルター・中性能フィルター・HEPAフィルターの3重構造と陽圧管理によるクラス10,000の維持

弊社のクリーンルームは、室外から取り込んだエアーをプレフィルター・中性能フィルター・HEPAフィルターの3段階で清浄化し、室内を陽圧に保つ構造です。これにより、外部からの汚染空気の侵入を防ぎながら、クラス10,000の清浄度を継続的に維持しています。

全成形機にセーラー万年筆社製5軸フルサーボ取出機を設置し、人手作業を排除した理由

弊社が保有する住友重機械製の射出成形機(SE50EV・SE100EV-A・SE100DUZ・SE180EV-A)の全台に、セーラー万年筆社製の5軸フルサーボトラバース型取出機を設置しています。人手による取出作業は発塵と気流の乱れをともないます。サーボ取出機への置き換えによって、取出工程における人的発塵リスクを構造的に排除しています。

ISO13485準拠の管理体制とDNAフリー保証が、委託先として証明するもの

医療用プラスチック成形の委託先を選ぶ際、「清浄な環境で作っている」という言葉だけでは判断できません。数値と認証で品質を証明できるかどうかが、委託先の信頼性の根拠になります。

QuantStudio 5による50検体同時PCR検査と試験書発行——DNAフリー・RNaseフリー・エンドトキシンフリーを数値で証明する

弊社では2023年にThermoFisher製リアルタイムPCRシステム「QuantStudio 5」を導入しました。同時に50検体の検査が可能で、弊社で成形した医療用プラスチック製品のDNAフリー・RNase/DNaseフリー・エンドトキシンフリーを定量的に保証します。検査後には独自の製品試験書を発行しており、お客様の社内承認や薬機法対応のエビデンスとしてご活用いただけます。

医療機器製造業登録・第二種製造販売業許可が顧客の薬機法対応を支える仕組み

弊社はISO13485の認証取得に加え、医療機器製造業(登録番号 11BZ200082)と第二種医療機器製造販売業(許可番号 11B2X10048)の両方を取得しています。製造から市場投入までを一貫してサポートできる体制は、国内の医療用プラスチック成形メーカーとしては数少ない対応です。ただし、製品の薬機法分類や申請対応の詳細については、個別の案件内容によって異なりますので、事前にご相談ください。

特級プラスチック成形技能士による金型設計とVA/VE提案

設備と品質保証だけでは、「他社が断った形状」の量産はできません。金型設計の技術力と、設計段階からの提案力が必要です。

抜きテーパーゼロ・0.1mm薄肉・φ0.6極細——他社が断る形状を量産できる理由

弊社には国家資格の最上位である特級プラスチック成形技能士が在籍しています。3D CAD(CADmeister)と流動解析(Timon Mold Designer)を組み合わせた金型設計により、他社が「製造困難」と判断するような形状——抜きテーパーゼロ、0.1mm薄肉、φ0.6極細、φ0.2微細穴——を量産ラインに乗せることが可能です。

開発初期から入ることで、後工程の不良率と金型修正コストを下げる

弊社では、製品の構想・基本設計段階からVA/VE提案を行っています。部品形状の変更や材料選定を成形工程の視点から早期に提案することで、試作段階での手戻りや量産後の金型修正コストを削減できます。「断られてから相談する」ではなく、「設計段階で一緒に考える」パートナーとしての関与が、最終的な品質安定とコスト最適化につながります。

💡よくある質問

Q.  医療機器部品の成形について、どの段階から相談できますか?

A.  開発・設計の初期段階からVA/VE提案を行っています。形状・用途・使用材料をお聞かせいただければ対応可能です。
Q.  DNAフリー・RNaseフリーの保証はどのように確認できますか?

A.  自社のリアルタイムPCRシステムで検査を行い、製品試験書を発行しています。数値でご確認いただけます。

親和工業のクリーンルーム成形、導入事例

麻酔針の芯——極細形状のクリーンルーム成形

麻酔針の芯は、直径が非常に細く、かつ寸法精度が求められる部品です。クリーンルーム環境での成形が必要であるうえ、φ単位での極細形状を安定して量産することが求められます。

課題と依頼の背景

※本事例の詳細(他社からの断り経緯・具体的な寸法値・依頼者の業種等)は、社内確認のうえ本文執筆時に追記をお願いします。

親和工業の対応と解決のポイント

3D CADと流動解析による金型設計の最適化、および全機サーボ取出機によるクリーンルーム成形の体制で対応しました。

薄肉チップの受託成形——0.1mm薄肉とクリーン品質の両立

体外診断や生殖医療向けのピペットチップ類では、薄肉成形とDNAフリー品質保証が同時に求められます。

課題と依頼の背景

※本事例の詳細は、社内確認のうえ本文執筆時に追記をお願いします。

親和工業の対応と解決のポイント

クラス10,000のクリーンルームでの薄肉成形と、QuantStudio 5によるDNAフリー検査・試験書発行をワンストップで対応しました。

💡よくある質問

Q.  事例に近い案件を持っていますが、まず何を準備して相談すればよいですか?

A.  製品の用途・想定材料・おおよその形状寸法をお伝えいただければ、初回相談から技術的な提案が可能です。

まとめ——クリーンルーム射出成形の難しさと、それを超える条件

クリーンルーム成形の難しさは「設備」ではなく「制御」にある

本コラムで解説してきたように、クリーンルーム成形の難しさは「清浄な部屋を作ること」にあるのではありません。発塵・空調・静電気・金型・作業員という5つの課題を、生産しながら同時に制御し続けることにあります。

クリーンルームを「設置した」だけでは、医療用プラスチック成形品の品質は担保できません。ISO13485準拠の管理体制・DNAフリー保証の検査力・特級プラスチック成形技能士による金型設計という3つの層が揃って初めて、「作れる」状態になります。

委託先選定の軸は「設備があるか」から「体制が整っているか」へ

医療機器・バイオ製品のプラスチック部品を委託する際、確認すべき最低限の項目があります。

確認項目親和工業
清浄度クラスの明示クラス10,000(HEPAフィルター3重構造・陽圧管理)
ISO13485の有無取得済み(令和元年9月認証取得)
医療機器製造業登録の有無登録済み(登録番号 11BZ200082)
金型設計の内製可否可(特級プラスチック成形技能士・3D CAD・流動解析)
品質試験書の発行可否可(QuantStudio 5によるPCR検査・試験書発行)

開発初期から相談できる委託先かどうかが、プロジェクトの成否を分けます。弊社では、「断られてから来る相談」を最も多くいただきます。設計段階から弊社に声をかけていただくことで、手戻りなく量産に至る確率は大きく変わります。

クリーンルーム成形でお困りの案件があれば、まずはお気軽にご相談ください。

💡よくある質問

Q.  クリーンルーム成形の委託先を選ぶとき、最低限確認すべきことは何ですか?

A.  清浄度クラス・ISO13485の有無・金型設計の内製可否・品質試験書の発行可否、この4点を確認することをお勧めします。

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